story 『クリスマスイブ』

私は気になっていた

後部座席の買い物袋が





アナタに

会いたいと言われて


ほんとは過ごせるはずもない

イブの夜


アナタは

私を誘った


私はいつも通り

フィレオフィッシュを買って

冷めないようにと抱えて


いつものバス停

隅の方に立って


アナタの車を見逃さないようにと

目を凝らしていた


アナタも

私を探して

バス停の先で止まった




私は

まだ子供だった


その時の自分の気持ち

本当にはわかっていなかった


イブの夜に

アナタに誘われた事も


心の隅で

ちょっと迷惑な感じがしていた


でも

会える事は嬉しかったし

断るという選択肢はなかった


アナタと過ごす時間は

あっという間で


家族に

アナタの事を話せないのは

辛かった


たくさんの嘘も

覚えた





イブの夜

私の家族も私を待っていた

アナタの家族も

アナタを待っていたでしょうに




あの時

後部座席にあった

買い物袋の中には

クリスマスの食材が入っていた

だから

待っている家族が気になった







どうして

アナタとの時間を

もっともっと大事にしなかったのか


アナタが

こんなに深く濃くいる人だと

思わなかった








馬鹿みたいだ

そんなアナタより

買い物袋が気になっていたなんて